― 渡河作戦翌朝・拠点前 ―
――………
[明け方。拠点を出て、懐からタバコのフィルターに模した笛を取り出し、一定のリズムをつけて吹く。
音はしない――否、人間には聞こえない。
その後、本物のタバコを吸いながらしばらく待てば。
3方向から、土のそれに似た毛色の犬たちが音を立てずに駆けてきた。
3頭のその犬たちは、首輪代わりに、ボロボロの風呂敷を首に巻いていて、毛並みも薄汚れている。
もふ好きの本音としては、手入れをしてキレイにしてやりたいが。
万一敵兵に見つかった時に『いかにも飼い犬です』な犬が居ては怪しまれる可能性がある為、あえて『捨てられた、もしくは飼い主を亡くした野良犬』に見えるよう偽装しているのだ]