[彼の後ろにいるロスチャイルド女伯爵は、 母に言わせれば、"下品な女狐"であった。 伝統的で正統な──と母が自称する── 武門の家であるブラオクヴェレ家と比べれば、 ロスチャイルド家は革新的で効率的な手腕を取る。 その差が、今のウェルシュと自分の階級に表れている。 そうも思うが、単純に能力の差なのだろう、と思考を止める。 士官学校を出て国元に帰って以来、煮え切らない自分に比べ、 ウェルシュはいくつもの作戦を果断にこなしていた。]