―王太子・軍務大臣暗殺事件直後―
[軍務大臣の暗殺については、政敵であった外務大臣にも疑いの目は向けられた。
だが、外務大臣が荒事を嫌うことは知れ渡っていて、形式的な聴取をされるにとどまった]
『暗殺するくらいなら、拉致監禁して不眠不休で説得してやる』
[彼はそう語ったという。
ともあれ、負傷した護衛官、ベリアンを病院に見舞うことができたのは、父の嫌疑が晴れてからになった]
本当は、言うべきではないのかも知れませんけれど。
……生きていてくれて、よかった。
[誰も聞いていないことを確かめて、こっそりと告げた。
彼が護衛の任務を全うできなかったことを考えれば、単純に喜ぶわけにはいかないのだ]
……契約、は。
[自分に何ができるわけでもないのに。
ただ、気がかりで、問うた]