― 回想・ラムスドルフ家惨殺事件の後 ―
[ 事件の直後は、心配するユーリエが付き添ってくれた。
家族の遺体は回収され、軍で検死が行われることになる。
司法解剖のため帰ってくるまでは少々時間がかかるだろう。
大丈夫だからとユーリエを一旦フェルゼンベルクに帰した。 ]
婚約したばかりなのに、何だかこんな事になって…。
ごめんな。
――うん。ありがとう…。
[ 結局、婚約者と両親の顔合わせをする事は叶わなかった。
最後まで心配顔のユーリエの額にキスをして、
「大丈夫、愛してるよ」と囁くと、馬車で送り出す。
――この時、彼女をフェルゼンベルクに帰さなければ――。
誰もいない自宅に入ると、そこはまだ散らかり、荒れていて。
居間には血痕が飛び散り、あちこちにビニールシートが
被せてあった。
やはり、ここにユーリエを何日も寝かせるわけにはいかない。 ]