[一ヵ月程経った頃、職員室前で生活指導教師の怒声を拾った。
何事かと近くを歩く生徒に連れられ、職員室を覗きこむ。]
『あれ、ローじゃん』『学校来てるの珍しい』『怒られてんの』
[ロー、と囁かれる男子生徒。
浅黒い肌に金髪と派手な出で立ちに、着崩した制服。
明らかに素行不良を絵に描いたようなそれに、呆れた息をついて目を逸らそうとして。
舌先を出して見せる表情が、記憶の端に引っかかった。]
あいつの名前、なんて書くんです?
[有名らしいので、近くに居た生徒を捕まえて聞く。
教えてもらった名前は、『申 炉』。ハーフという情報のおまけつき。
ガツン、と殴られたような衝撃に顔が強張った。]