[ベリアン・アリー。
学生時代そのままの名を、彼は名乗った。
かつて、彼にも幾度か剣の手ほどきを頼んだことがある。
彼の奥底にあるものには、とうとう触れることができなかったけれど。
少なくとも、自分が近づくことを拒みはしなかった。
彼の卒業で別れてから、3年。
今語られるのは――初めて耳にする、彼の出自>>319]
……故郷。
[自分はしっかりと地盤を持つ貴族の家に生まれた。
寮に入って親元を離れても、帰省すればいつでも「故郷」はそこにあって、失われるなど夢にも思ったことはなかった。
だから、故郷そのものが消えてしまった民の想いは、想像することしかできなかったけれど>>320]