仕立て屋 エルナ

[外は、すっかり落ち着いていた。聞こえてくるのは、虫たちのオーケストラくらいだ。

まさに、その惨劇の序章が始まっていることなど思いもよらず。>>647

涼しい夜風と、ツンと鼻に抜ける草花の香りが、今まで強張っていたエルナの身体を優しく包み込んでくれる。


______そのとき。

いつもよりも薬が効きすぎたのか。

それとも、張り詰めた緊張がプツリと切れてしまったのか。

グワンと視界が歪んだと思った直後、身体中から力が抜け、エルナの身体は、硬い地面に打ちつけるように、その場に倒れ込んだ。

暗く、人目につかない場所なので、朝が来るまで、誰かに目撃されることはないだろう]