[綻びの無い敬礼と共に、眼差しを大佐その人に据える。]
これより、麾下として参戦します。
何なりとご用命を。
[このひとの命の元で戦場に赴くことになる。
何一つ不思議でないことなのだが、向き合う眼差しが奇妙な感慨を連れて来る。
かつてより精悍さを増したものの、変わらぬ面影に思い出されるのは、彼とその好敵手であるかつての同居人のこと。あの8年間、もう一人の兄とも慕った人のことだ。
また、トルステンと共に在った西の副寮長のことも。
若い思い出が脳裏に鮮明に蘇り、
そして思い知る。
彼らの名は、公国に無いのだと。
―――封じたはずの、どこかが痛んだ気がした。*]