―二年後春・生徒会室―
……そうか。寂しくなるね。
[中退の挨拶にきた下級生に、そう答える]
少しだけ、話をしてもいいかな。
紅茶と珈琲、どちらを淹れようか?
皇帝の死後、高まりつつある両国間の緊張。
この中立地帯においても、その影響から逃れることはできなかった。
「家の事情」で学校を去る者は、以前とは比べものにならないほど多い。
両国の境にあるこの場所はすなわち、ひとたび戦となればたちまち前線と化す。
市街地や観光地は、今のところこれまでと大きく変わっては見えなかったが、
やはりそれぞれの国へと戻ってゆく住人が多いようだった]