― 時は少し遡り ―
レナト・デ・フォルテア大尉ならびに傘下小隊一同、
本日昼をもってシュヴァルベ戦線に到着完了しました。
[フェーダ公国各地での戦闘防衛に携わっていた一軍が、
シュヴァルベへの転戦を命じられ、任に就いた。
何を置いても先に行うべきは上官への報告であると、到着からいくらも経たぬうちに高級将校の執務室に赴いたから、彼との再会は夕闇煙る中であった。]
……再びお目通り叶い光栄です。
トルステン・フォン・ラウツェニング大佐。
[公国貴族の端に名を連ねる以上、“家”を把握するのは当然のこと。とりわけ、公国において絶大な権力を有する家であれば。
ラウツェニングは卒業後に真っ先に記憶に叩き込んだ名の一つであり―――、ただ、トルステンという名が旧知たる先輩の顔と結びつくまでにはそれなりに時間がかかったのだが。]