[書状をしたためようとする素振りに、これにて遣いは済んだと知る。
社交には欠かせぬ儀の一つとはいえ、ダンスの教授を請えとは、
趣旨を鑑みれば妙だとは思ったが>>687
仮初の主は、不必要に嘘を吐くよりは無言を選ぶだろうと
判じていた。自分の見立ては、どうやら見当違いだったらしい。
速やかに認識を削除、上書きのち、傍線を引き]
――……、
[生まれながらの王者然とした様を目の当たりにしていると、
独りの時よりなお多く、繰り返される問い。
彼であれば、造作なく答えを下すのかも知れない。
――けれど、自分は彼ではない。
形に成り切らない言葉を、敢えて口にはせず]
……また、閣下にお目通りできる栄を賜れましたら。
幸いに存じます。
[静かにそう言い添えて、主への書状を御願いする]