― 公国軍兵舎・中級将校執務室 ― 入れ。[来客を知らせる部下の声に、手にしていたカップを置いた。恐らく、呼び出しておいた相手だろう。>>452書類に目を落とせば、見覚えのある名が並んでいる。フレデリカ・ファロン。同姓同名の別人でなければ士官学校の後輩であるはず。同じ寮の、金髪の、小柄な男子生徒。数年ぶりに見る彼は、どれほど逞しくなっているか。背は伸びているか――― ふと、場に似つかわしくない笑みが浮かんだ。]