[勝った方が、船にオルヴァルの樽を奢る。
酒の席で持ち上がった、そんな奇妙な取り決めで艦長とその副官が船上に刃撃ち合わせることとなったのは、ある休暇中の出来事だった。
船は港に入っている。船員たちも休暇を得て、思い思いに陸に散った者もあったが、船内でのんびりと過ごす者らもあり、また補給の任に留まって働く者もあり、その時は結構な人数が船内にいたものである。そこにゲオルグとタクマもいた。偶然のタイミングではあったのだが。
──── 面白い。
酒の席での他愛ない戯れ言。
それが、その話を聞いて真っ先に男が浮かべた感想だった。]