旅人 ニコラス

ゲルト、あの村では僕と話をしている最中でも気が付くと寝てたよね。いまのおれはふと意識をゆるめると眠っちゃうから、あのときの君の状態はよく理解できる。

教会に行くときは必ず声をかけてひっぱっていったから、眠い人を上手に誘導するコツを！　掴んだ気がする！　何となく。
これで故郷の同胞がどこかで寝落ちしても安心だね。いやその前にお前が寝ているだろって思っても突っ込まないでお願い。

あのあと君は僕と世界中を旅しているんだなあと思うと、なんだか感慨深い不思議な気持ちになるよ。だけど、ゲルトと出会えたおかげで、僕ことニコラスは救われた。あの温かな気持ちは、一生忘れないと断言できる。

[早口ではあってもちゃんと聞き取れる程度にはコントロールして、がーっと喋り倒した。

一応というかれっきとした初対面の人に何語ってんだと言われる気しかしないが、ゲルトは優しく接してくれるかもしれない。さてどうだろう？

ここで黙り込んで、ゲルトの反応を伺う。]