― 回想:"私"の戦争 ―[そこは海の上でした。青々とした海に白い轍を作りながら進んでいく船がありました。きらきらと陽の光を受けて輝く水面は眩しく、時折海鳥が甲高く鳴いて船の傍を通り過ぎて行きます。空に高く掲げられた太陽と鴉を頂く旗は風を受けて大きくはためいていました。][ミリエル・クラリス。まだ齢十にも満たなかった当時の私は太陽を掲げる船の中、暗く薄ら寒い船室の一角に身を置いていました。祖国の敗戦は疾うに決まっていましたが、私の戦争が始まったのはその時からでした。]