[やや乱暴にドアを開けると教室がわずかにどよめいた。
集まった視線も睨みを利かせればあっという間に散って行く。
誰の鞄も掛かってない空いた机を見つけ、その後ろには皇大河だろう平凡そうな男子生徒。どよめきにも反応せず本を読んでいた。
財布くらいしか入ってない鞄を乗せ、席に座ろうとした時だった。]
…………あぁ?
[いろり、と。小さな呟きを耳が拾い、後ろを振り向いた。
今の炉をその名で呼ぶ者はこの学校にはいない。
同じ中学から進学して来た者に散々凄み、呼ばせないようにして。
教師も
だからその呼び名を知り、なおかつ呼べる者などいないはずだった。
遥か昔に転校した、志水大河ただ一人だけを除いては。]