[今とて眼前の王者の何を知る訳ではないが、
その風格と身分は一致していたらしく>>658]
寡聞を何卒ご容赦下さい、マスター・アハド。
[名を刻むように、今ひとたび丁寧に唇に乗せる]
……身に余るお言葉です。
[掛けられた呼称には、そっと囁きを返す。
下された問いは、不意を突くもの]
――…畏れながら、若輩者の私が易々とお答えして
良いことではないかと存じます。
あいにくと、答えも持ち合わせておりません。
ですが。…考え続けることは、お約束致します。
[答えを出せない問いは身の内にもある。問うべき人々は既に無い。
統べる者として在る吸血鬼を前に、頭の片隅でまた思う]