[上辺だけの笑顔を浮かべ、
無用な贅沢を重ね、
腹の底で、相手を蹴落とすことを考える――…
軍人としての心得は8年間で叩き込まれたけれど。
貴族様のお作法にはまだ慣れないし、慣れたくもなかった]
…はァ。
早く終わってくんねェかなァ、これ…。
[バルコニーの手摺に両腕を乗せ、
だらりと頬杖をつくような格好で、喧騒の合間の息をつく。
これ、とは今出席している社交パーティーのことを指す。
ファミル女伯爵が用事が入ったとか何とかで、
代理出席を命令されたが、正直、場違い極まりない。
今度新しく爵位を襲名したトゥーレーヌ公の顔見せを兼ねて、
最近は社交パーティがよく催されているらしいのだが
貴族階級でない此方には知ったこっちゃない話である]