[懸念は面に出さずとも、先より感知していた騒乱の兆し。
同種の危機として顕現すれば、抑え切れぬ動揺が顔に上る>>615]
―――やめ…、ッ、
[立ち込める濃霧の奥に、惑う水精の気配。
遊猟に逸る邪気が迫るを感じ取り、張り上げた声がふつと途切れる]
[生来湛える光は今や底を尽きかけ、水精の微弱な気と大差ない。
加護をも授けうる筈の身は、強い腕にただ護られるだけの有様。
泣きそうに細めた双眸で、夫の横顔を素早く盗み見る。
――彼に娶られると知った日から、選び続けてきた決意。
見上げた姿に再び噛み締めれば、くっと小さく喉が鳴る]