― 3年と2ヵ月後・帝国領内の某所 ―
[帝国と公国、双方から仕官するよう誘われていた、シュヴァルベの武術教官が姿を消した。
その知らせが伝わった際、どちらの国も、もう一国へ仕官したと思っただろう。
そして、もう一国にも現れていないという情報を得れば、どちらにつくこともせずに逃げ出したと思われたか。
それとも、父の代までと同様、中立の立場で双方からの依頼を金次第で引き受ける事を選んだと思われたか]
………すまん。
公爵閣下への取次ぎを頼みたいんだが。
[だが、シュヴァルベで姿を消した2ヵ月後。
その男は、帝国領の公爵家の門前にいた。
誰何し警戒する様子に、めんどくさそうな顔で荷物からワニ柄の筒を取り出し]
士官学校で預かっていた証書を届けに来た、といえば通じる筈だ。
[そう言って門番へ渡せば、危険物が入っていないかと、その場で中身を確認してから取次ぎに向かうのが見えた]