…異邦人の隊へ命令。スルジエに移れ。
[微かな逡巡のち小声で護衛に囁くと、私兵のひとりが何処かへと去る]
では君は何を為すべきか。
山岳ウェントスの民、まつろわぬ古の民としての君は。
王府に忠義を奉げる、それもひとつだが一族は容易く揺るがんだろう。
暴徒共の決起に混じり新たな国を作る、それもまたひとつの道ではある。
世界を広げるも秩序を守るも、民の意思までは強制できんのが如何ともしがたい。
それが国と云う物だが、時に海原の様に嵐に揺れるは歯がゆい物だ。
[青年へ向き直り、男は道を説く。然しその道は定かではない。
何せ男自身、未だその道を毅然と固めていないのだから]