[シコンの港を出る時、岸壁の上から手を振っている子供の姿が見えた。いつもそうして船を見送っているのかもしれない。ファミルが守った日常風景だ。双眼鏡を目に当てて見れば、10歳にはなっていないだろう年頃の少年と少女だった。それと認識して、胸にチクリとした痛みが蘇る。あれは15年ほど前、オルヴァル滅亡の後。当時9歳になったばかりの皇太孫アレクトールの前に、ほんのわずかな時間だけ存在した金髪の少女。名は、ミリエル・クラリスといった──]