[調査にあたっていた官憲の者にだけ身分を明かし、少女の遺体を見聞する。
その亡骸は無残に切り刻まれていたが。
リエヴルは僅か眉を顰めながらも、じっとその様子を観察した。]
…………………………。
[何かが、おかしい。
自分はエルンスト・ヒンメルには度々視線を注いできた。
その視線は観察というよりは非難に近いものではあったが、それでも相手をよく見ていた。
リエヴルからヒンメルへの憎しみはひとえに紅茶の飲み方というだけであって、彼自身の性格や素行に由来するものではない。
むしろ、ごく真っ当な男に見えていた。]