― カレンの灯台→街中へ ―
[港側のここいらまで、戦場の喧騒は聞こえるものらしい。
さてはて、近くに魔術の気配が漂ったと言う事は即ち、“魔女”なり何なりに己が見つかった、と言う事である。
高所はいけない、逃げ道がない。ならば街中が良い。ここには良く商売に来ているのだ、それなりに地理には自信がある。
慌てて、猫たちに街中に散らばっていろ、と命じた。
矢張り一匹だけは傍を離れずに、仕方なしに抱えていく。]
ったく、なんて日だ、クソッ。
[石造りの階段を下りる。急げ、急げ。魔女がやりきるのなら距離は関係ない、あるのは一つ、詠唱が終わるまでの一秒足らず。
その詠唱すらも、モノによっては必要ない。つまり勝てない。勝てないならどうするか。
簡単だ、逃げればいいのである。走って。
そう、走って。
何時間寝ていたかわからないが、全力疾走と力量全てやりきって、倒れ込むようにしていたのである。
それが少しの休息で休める訳もない。]