――6年前の春――[トールには、自らが怖がりなことは知られているだろうとも思っていた。怯えた夜には、いつもさりげなく気遣ってくれていた。その優しさに、いつだって心安らいだものだ。これから先は、彼が、いない。そう思っただけで、心にぽっかりと穴が空いてしまったかのような気になる。いや、事実大きな穴があいていたのだ。]