[ ―――……中尉!朝ですよ!
怒られて揺さぶられている。メルクーリオの声。
わかっているが、如何ともしがたい。
朝ですよ、というのは決まり文句なので、正確な時間を言えと思うのだが、それだと起こしてる感が出ないらしい。
軍に戻ってきた頃に、たまたま同じ部隊に配属されて。
ただの偶然が重なって命を救った事が幾度か。
感謝の言葉を口にする前にのびる俺を、彼がどう思っているのかは知らない。
……どうしてそんなに真っ当なんだと言いたくなる。
お前も、ここの奴らも。士官学校の人々も。
命のやり取りをしているくせに。
心身を削りながら、誰かの命を削って生きているくせに。
必死に削らずに守ったものを、
さも当たり前のように差し出せるのは、何故なのだろう]