[自分からは話さない。また、笑顔も見せない。声も落ち着いて、動きにも無駄がなく。書庫だけで見せる顔。もしかしたら、ベリアンだけが知る顔。好意的なものではないとしても、それは一種の特別かもしれない。多くを語らず、別れも告げずレトは静かに書庫を出る。テラスへ続く扉は閉められていた。風の音も耳鳴りも、区別がつかなくなる。夢も、現も、分からなくなる――**]