― 談話室での回想 ―
[黒服の男や、その他に霊と思しき姿は視えた事が無いか。
そんなヴァルターの質問に、数秒考え込み、首を横に揺るった>>590]
……いや。悪いが後の方は心当たりが無い。
元々この10年近くは、気軽に人前に顔も出してないから。
そう云う話し合わせをする機会自体、稀なんだ。
でも、黒い衣の男は……そうだな……。
強い雪風の中から、その姿を視えて。
服も辺りも昏くて、表情もよく視えなかった。
だけど――瞬きをした時、視えなくなってた。
[見極めているのか、或いは猜疑を抱いているのか。
然しそこの判断は脇において、改めて霊について応える。
自分が、確実に霊を視れるかは兎も角として。
しかし、あの黒服の男は、確かに幽霊である様にしか思えないのだ]