[己の観察眼は大した精度でないが、あれは飼い主飼い犬の間柄と云うより、睦まじい番に見えた。二人とも何処から見ても、男同士であるはずなのに、当たり前のように鴛鴦に例えてしまった己も大分疲れているらしい。あの二人が番なら、案外足りない場所を埋めあい、上手くいくんじゃないかとか、更に伸びる思考を頭を振って払う。東京に着いたら少しからかってやろう。「首輪もペアか?」と、飴の礼とも言える意地悪を塗して。そこまで考えると、蟀谷を親指で圧し、肩から力を抜いた。*]