[まだ自分が物心ついて間もない時のことだっただろうか。
二人の若者が小舟で結界の外へと行こうという事件があった。
時々外の世界が気になったとかで、
そういう試みをする人間は数年に何人か居るらしいが、
その時は貴族の息子だということで、一部では大事だったと、
当時王府の軍人だった父が話していたのを覚えている。
その話はわりと周りの子供達の間では有名な話となり、
いつか自分が結界の突破を成功させるんだ、
と夢を見る少年も少なくはなかっただろう。
数年前海に飲まれた友人もそうだった。
―――勿論、目の前の彼もまだそれを諦めてないように見える。]