紫式部かくやの54帖は期待されて居ないだろうが、俺は気になる。
―――…確り走り書きまで取っていたじゃないか。
[彼女の隣へ戻るなり口を開く兄の興味は、一週回っても削げず。
冷え始めた夜には、淹れたての茶が五臓六腑に染みた。
その間に彼女の言葉をもう一度脳内で反芻するも、
拝読に対する否の言葉は見つからず終い。
沈黙とは即ち肯定、世界は都合よく出来ている。>>559]
では、提出がてら後学の為に拝見させてくれ。
[嫁入り果たした出汁巻をひょいと胃袋に迎えて、手を合わせた。
ご馳走様、と傍らの彼女に告げて、立ち上がり際にレポート奪取。
ひらりと彼女の視界の端を泳ぎ、兄が回収。>>569]
ほら、琉璃もおいで。
赤ペンなんて持ち歩いていない、添削は口頭だ。
[白々しい言葉と笑みで妹を誘い、攫ったレポートが閃く。
そうして夕食を済ませた双子は、何時もの調子で広間を後に。*]