― 書庫 ―[それがやってきたのは、いい具合に書き物が仕上がり、息抜きに中庭にでも出ようかと立ち上がりかけた時だった。すれ違いにならなかったのは、おそらくお互いにとって幸運なことだったろう。] 俺がロー・シェンだ。[名を問う声に頷いて立ち上がり、相手に正対する。敬礼に、こちらも敬礼を返してから、まじまじと使者の姿を見た。] ……なにをしてきたんだ?[道なき道を突っ切った感のある相手の姿に、手を下ろしながら問うてみる。]