旅人 ニコラス

「いいか、改めて確認するぞ？　人狼ってのはな、人間を襲って食っちまう化け物なんだ。こいつらが現れたら村は襲われ、一人残さず殺されちまう。それを防ぐ手段はただひとつ。昼間、奴らがまだ人間の姿でいるうちに――」

もう黙れ！　僕だってその先くらい、文献を読んで知っている！

[いらいらして説明を遮れば、少年は呆れた口調を隠さずに眉をひそめる。]

「本当かよ？　自分で体験せずに、他人の与太話詰め込んで勉強したつもりでいる頭でっかちさん。でもなあ、これだけは言っておくぜ？」

[次の瞬間、まだ幼さを残した顔が何故か周囲の光景ごとぐにゃりとゆがんだ。]

「未熟なオメーじゃ、俺のように占い能力を使いこなすなんて、ぜってーむ……り………だ―――」