― 四年前・風花の村の教会 ―
[四年前のある日、ふらりと立ち寄った風花の村。
三日後に婚礼があると新郎の父親に依頼されて一曲弾く事となった。
誰でも口ずさめるような軽い歌詞をつけて、式の途中で振る舞った。
今も此処で働いている神父だかその時に勤めていたシスターだかがパイプオルガンで合わせたのだったか。
式も終わり、教会の中庭で参列した少女と擦れ違った>>496。]
……その曲、気に入ったか
[新緑の色の帽子の鍔を少しあげて男よりも少し濃い髪の色をした少女を見下ろす。]
あんたがいい男を見つけたら、もっといい曲を弾いてやるさ。
[僅かに口端を上げてから、再び鍔を下げ。
普通のヴァイオリンより一回り大きなそれを背負い込み、彼女の脇を通りすぎて、新緑のマントに身を包んだ男は公道へ向けて立ち去る。
気まぐれに交わした口約束は、叶う事は無かったけれども**]