だが、シュビトの街の熱気は、北にも充分すぎる程に伝わっていたからな、何か面白いことが起こりそうだ、と、そう思って見物の用意を怠らなかっただけだ。私は、面白いことは見逃したくない性質でね。
[笑み含んで連ねられる言葉は、カナンにどのような心証を抱かせたか。しかし、その笑みは、クロード・ジェフロイの名が耳に届くと同時に、一瞬、男の面から掻き消える]
なるほど、では、大使殿はご存知なかった、ということか。
[問いに対する答えではなく、その問いかけそのものが、カナンのあの演説が、民衆に火を着ける扇動者としての自覚を持って為されたのではないことを示す事を確認する言葉を漏らして、男は小さく頷く]