負傷兵 シモン

― �@号室 ―

［見舞客はあらかた出ていった後なのか、部屋にはベッドに眠るゲルトと自分の二人だけだった。
　ベッドの側の椅子に腰掛け、眠っているゲルトの顔を覗き込む。］

　――君は、本当によくやったと思うよ。
　予言者としての役割を果たし、
　神父さんのおかげで自らの死も免れた。
　ただ――

　もし今後君が目覚めたその時に、
　一緒に回復を喜んでくれる人が、
　果たして何人残っているだろう？

　――いっその事、このままずーっと目覚めずに天寿を全うするか、あるいは他の村の寝坊助さんと同じに狼の餌になってしまった方が、存外幸せかもしれないね？

　なあに、心配ないさ。
　"向こう"に行けば、痛い事も辛い事も無い。
　喰う喰われ、殺し殺されの呪縛から解放され、
　人も狼も、皆が幸せで居られるんだ。

［きっと聞こえてない耳元で、そう囁いて］

　だが、君に手を下すのは俺じゃない。
　君が生きていられるかどうかは、
　君の生命力の頑張りと、
　"彼ら"の気まぐれ次第だ。

［まあせいぜい頑張りな、と声を掛けて、�@号室をあとにした。
　談話室には誰か居るだろうか？一先ず向かってみよう。］*