― 回想・10年前/ストンプ ―[大人たちの話から抜け出し、ウルケル風の屋敷を物珍しく見物して回っていたところへ、後ろから走ってくる足音が聞こえてきた。海の見える庭先を背にして振り返れば、柔らかな亜麻色の髪が跳ねている。頬に差す桜色は、庭の花よりも鮮やかだ。目の前までやってきた少年は、前置きも無くいきなりしゃべり出した。それを黙って聞く。相手からは無愛想に見えたかもしれない。本人は、単に面喰って固まっていただけだった。]