少女 リーザ

［頬が熱を帯びている感覚はある。
　今現在、"リーザ"の記憶を無視できていないことも。

　今までこの無機質な文字が嫌いだったが
　こういう時、感情を表さない文字はとても便利だと思う。
　声を出していたら間違いなく、
　挙動不審になっている自信があるから。］


　　『そうだ、パン。
　　　現実世界でも焼いていたりするのですか？』


［なんとか思考をまとめて捻り出した話題がこれだった。
　もし彼が焼いているのなら食べてみたいと
　ゲームの中の"リーザ"と
　現実世界の"リーザ"が口をそろえたのだ。

　まだ少し赤らんだ表情のまま首を傾げる。
　彼にはこの赤みが、
　頭をぶつけたことへの恥ずかしさからだと
　捉えられればいいなと祈りながら。］*