― 悪夢のような ―
[カシャン、と銀食器が触れ合う音が響く。
傾いたグラスから、仄かに黄金に色づいた酒が滴り
真っ白なナプキンを濡らしていく]
……あ、ああ すみません
[丁寧な謝罪]
ねぇ、王子
私を痛めつけても、面白くないでしょう…?
[再び満たされるグラス。一息に呷り、再び閉じた眦からは一筋涙が零れ落ちる。
席を立った王子は、ことさらゆっくりと歩み寄り
レトの頤に手をかけると、二人がよく見えるよう持ち上げ、ネクタイを引き抜いた。
未だ白い軍服。ネクタイが去れば、胸元に、薔薇のよう赤い染みがじわりと浮き上がる]