― そうして、商人が死んだ後。 ―
[ファミル、本来の名をファミリアと名乗るハーフエルフは、多少の情はあれども基本的に薄情で、守銭奴で、イヤミで狭量な男であった。
誰かの預言>>0:293通り、「誰にも悼まれずに死ぬ」のである。
だから、猫が看取った。
精霊が看取った。
最後まで傍を離れなかった猫は、商人の、最後まで離さなかった形見の宝石と、短剣を、そのちまっとした両手で持って、シェットラントへ向けて、頭を下げた。]
『 ウチのダンナさんが、ごめいわくをおかけしたにゃー 』
『 わるいけど、これはもってくにゃ 』
『 ボクらケット・シーは、森にいくにゃ。
キシダンにトーコーしてセンソーホーキだにゃー。 』
[突然二足歩行で喋った猫に、驚いたかもしれない。*]