人狼物語−薔薇の下国

68 Es2nd― 緋の世界に滲む月 ―


狩猟師 ギィ

[冬の香をほんのりと乗せた強い風が、中庭の木々を揺らす。
赤い薔薇の花弁が僅かに散っただろう。

陽光を失い、辺り一面灰色の世界に零れた
それはまるで血飛沫のように、美しく。

ソマリの姿は花弁の流れたその手前で、
彼の眩い金絹と同じ鮮やかさを保っていた。

己の表情はきっと、先程の彼と同じような
完全なる無を纏っていた。
ソマリの気遣いを乗せた声音が右から左へ流れるけれど
一歩を踏み出すことはもう、出来なかった。]

 ―――穢したくは、無い。

[友を。己が触れては、清らかな彼の心が穢れてしまう。

囁きは強い風が搔き消してくれる。
男はそのまま、踵を返して森の方角へと消えていった*]

(559) 2013/09/30(Mon) 23:15:23

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