旅人 ニコラス

[一旦言葉を切り、カタリナへ視線を向けて続きを再開した。]

あなたは優しい人ですね。本当に軟弱だったら、相手にどんな恩があろうとも、自分の都合を優先して気持ちを押し付ける。

だけどこんな状況でも自らを律して、大切な人を第一に考えられるのは、掬い上げてくれて嬉しかったからでしょ？　何よりも心の支えになったからでしょ？

……でもね、きっとそれは同時にリーザにも救いだったと思います。家族も縋る場所もなくしたあなたを見た時、あなたの友人はどうにかしてあげたいと考えたはず。というか僕が想像する彼女なら、きっとそうする。

[違いますか？　と微笑を浮かべて羊飼いへ念を押しながら、帽子を拾って被り直した。]