……琉璃。
旅は恥の掻き捨てと云うが、俺は同意しかねる。
気恥ずかしくないのかと云われたなら頷くが、
これは本音だ、捨てられるはずもない。
修学旅行に託けて……など、
大分青臭いが真面目な話でもある。聞いてくれ。
[回りくどい前置きを乗せると、社へ二度拍手を向け、
一度頭を下げてから、彼女へと向き直り。
重ねる眼差しは良く似た翡翠の珠二対。]
俺は琉璃のことを、妹としても、一人の女としても好いている。
照れくさいので何度もは云わない、だが、首は縦に振れ。
[繋いだ手を揺らしてしまうのは気を紛らわせるため。
数度視線が脇へと逃れ、言葉を噛んで、間々沈黙が落ち。
わざ、と風に揺れた木々の音色の背中を押され、
観念したように、気障な台詞を捨て、真情を吐き出した。]