旅人 ニコラス

― 少し前・宿屋の外 ―

[初めて見せる表情>>516に目を奪われた。怒りをにじませる顔を前に、こんなときに不謹慎だけど、美しいと思った。勿論口にはしないし、そもそも勇気がないから出来る訳ないけど。

反射的に羊飼いの目元を拭うために手を伸ばそうとして、占い師としての戒めを思い出して、ひっこめる。

自分が師匠から習った流儀には、”占い能力を維持するために、異性に自ら触れてはならない”がある(相手からの接触がきっかけだったら触れてもOK)。今まで極力接触を避けていたのも、記憶がなくなっていたのに自分を縛る鎖は消えなかったのだと、自嘲したくなった。

カタリナにストールかけたときは直接触ってないからセーフ。エルナは男性と分かっていたからセーフ。

なお俺は人狼騒動のエキスパートとかプロフェッショナルとか表現すれば聞こえはいいが、要するに占い師として最適に動くために、それに必要な言動に全能力をほぼ割り振っている。それ以外はポンコツofポンコツ、手品を覚えたのはリハビリ中に生活の糧として学んだお陰。たまたま生まれつき手先が器用だったのが幸いしただけだ。閑話休題。]