[理性で結ばれていた結界は破れ、
お互いを囲んでいた本当の呪いが溶けていく。
自分は彼女の兄で、彼女は自分の妹だと、教えられ続けたが、
頭での理解に心の納得が勝るほど、大人でもなかった。
まだ未成年たる互いには、この先幾つも壁が立ちはだかるだろう。
彼是難しいこと以前に、己は傲慢で彼女はやきもち焼きだ。
十八年経って、世界で一番彼女を知ると太鼓判を捺されても、
己はまだ、彼女の全てを知らず、だが、彼女の全てを知りたい。
己が教わる分だけ、彼女にも教えてもらおうと思う。
己の知っていること、知らないこと、全てを二人で。>>522]
―――…問いかけてる癖に自信満々だ。
そんな所は少し似ているよな。
……ああ、兄妹だけでなく、夫婦でも似るのだったか。
[呟いた言葉は、彼女の鼓膜を擽り、終わりの社が見えてくる。
人生祈願の一巡りもこれにてお終い。修学旅行も最終幕。]