元々、あと何年かしか生きられない。
だから、覚悟はしてた。
死にたいか生きたいかっていったら、
それは生きてたいけどさ。
でも、大丈夫。
[もう時間が無いことが、此方側を選んだ理由じゃない。
そこは、きっと考慮に入っていなかった。
――でも、覚悟自体は出来ているから。
元々これが、与えられた寿命だった。
だからせめて、ひとつでも多く守れるようにと――独りよがりで見えてないものもあまりにも多くあったけれど――それを望みに、ここまで来たから。
うん、やっぱり、いくらでも我慢は出来る。
自分が生きていることを知らされて、
まだ生きられるかもしれないと分かって、
揺さぶられる心がなかったかというと、それは嘘になるけれど。
自分が此方に入ることで空く一つ分の避難艇が、ラグナロクを止めるために太陽へと向かう選択が、他の選択肢は選び得ないほどに、いまは重い。
――… 結局、此方側を選んでしまう。
自身の“死”のあとで、亡骸を見ていた
そのひとの涙を、忘れるはずなど、なくとも。
いま目の前にいるこのひとが、
自分の生を望んでくれていることを、
どれほどに、わかっていても。]