「宇宙海賊が本艦を狙っているとの情報は、乗船前からすでに得ています」
[ 淡々と告げる。 ]
なんだと! なぜそれを…
[ そんな主の声を遮るように、アビィは近づいて、その手をそっと肩に置き、 ]
「本艦やアースガルド軍艦に補足されない距離を保ち、尾行していると思われます」
[ 聞かれてはならない会話。接触回線で。 ]
「我々の目的は、本艦での情報収集です。しかし守りは厳重。先ほどのように探りを入れるだけでは不十分です」
「そこで別勢力を利用します。革命軍でもかまいませんが、ひとまずは海賊を利用しましょう」
「海賊がいつ行動を起こすかわかりませんが、できればこちらからコンタクトが取りたい。
こころもとないですが、一般乗客用の通信室を使います」
[ すでに、何かがおかしいことを彼は悟っている。主従が逆転している感じ……そう、か。
これは"イア様"の、いや、"彼ら"の意志か、と。 ]
「ご安心ください。すべて私が手配します。あなたはすでに監視されているはず。あなた自身が動くのは危険です。私の行動をここからモニタしていてください。行動開始は47時。コンタクト実行は48時直前です。なぜか? もちろんヒトの就寝時間というのもありますが、本日48時に数分だけ、本艦のメイン・システムがメンテナンスモードに切り替わるとの情報を得ております。セキュリティ・レベルの低下するそのときに艦の通信網よりクラッキングを実施、バックドアさえ作成できれば、しばらくは外部に向けた不審な通信でも、セキュリティの検閲にかかることはありません……。」
[ 肩に乗ったドロイドの冷たい手。その重みを受け止め、彼は頷くしかなかった。 ]