―エルンスト・ヒンメルの回想―
[ダーフィトの作った菓子がきっかけだった。
その子供と、仲が良くなったのは。
ふわふわの金髪が愛らしくて。
いつも、うさぎのぬいぐるみを大事そうに抱えていた。
口元いっぱいにマドレーヌの食べこぼしをつけて、美味しい、と笑い、
ぬいぐるみの耳を破いてしまったといって、顔中をくしゃくしゃにして泣いていた。
不器用に針糸を使って直してやったぬいぐるみに、本当にうれしそうに笑った。
もしこんな子供を持てるような人生なら、どんなに幸せだろう。
――ダーフィトも、そう思っているのだろうな。
尋ねたことはなかったけれど、そう確信していた]