羊飼い カタリナ

　　── 羊飼いは故郷の夢を見るか？ ──

［　吹き付ける強い風が頬を叩き目が覚める。
　　どうやらゆりかごのような船の揺れが
　　私を眠りに誘っていたようだ。

　　瞼をこすりながら辺りを見渡すと
　　穏やかな陽光を浴びた湖の水面が
　　彼方の山から駆け下りる颪の助けを借りて
　　さざ波を育みながらきらきらと輝いていた。

　　眩しさに目を細めながらも船の先に視線を向ければ
　　小島の端、小さな船着き場が見えてくる。

　　やがて帆を叩く風が秋の香りとともに
　　微かな硫黄の匂いを届けてくれれば
　　口元から感嘆とも安堵ともつかぬため息が溢れる。

　　更に桟橋の向こう、集落へ続く道の両脇に広がる
　　金色の稲穂や薄を目にすれば、
　　こみ上げてる得も言えぬ開放感と感動に、
　　固唾を飲み込み密かに震えもしただろう。

　　��ああ、帰ってきた��のだと……　］