[ユルド社。
国境の分け隔てなく武器の販売を手がける商会の名前だった。
戦中は国軍…或いはウルケルの傭兵たちに破格の値段で武器を提供していた。
…国益のために。商会を取り仕切る会長の口癖だったが、その実、ユルド社は裏で帝国とも取引を交わしていたのだ。
ある時には商会の伝手を使って海運業も営む商会>>0:87へ。…もしくは直接商会の者の手で。
オルヴァル近辺の暗礁地帯の多い複雑な海域の海図や国軍の情報などが多く帝国へ売り渡された。
それは売国奴と称されるに難くない所業だっただろう。
――けれど、戦中の混乱の中。
そのことに気付き、糾弾した者はいなかった。]